と貧困層とのギャップが拡大し、多くの大規模農園労働者や都市部の低賃金労働者がフィリピンから海外へと出国していった。 (6)アキノ政権からラモス政権に−再民主化に向けて− 差し迫る経済危機、軍国主義化、人権柔躍、殺人事件の多発などの社会混乱の最中の1983年、反政府派のB・アキノ上院議員の暗殺事件が発生した。この事件を契機として、軍部による反乱と大統領選挙の不正を追及する抗議運動が全国的に沸き起こった。この運動は2月革命(ピープル・パワー革命)と呼ばれ、最終的には1986年のマルコス政権追放、C・アキノ未亡人の大統領就任へと結実した。 C・アキノ大統領は、雇用の創出、効率的な社会福祉、農地改革などの緊急課題をはじめとして、巨額の対外債務、持続的な経済成長などへの対応、さらには国の信頼、モラルの回復に向けた制度上の整備と官僚制の改革に努めた。大統領就任後の1987年に新憲法がフィリピン国民によって批准され、議会は再び活性化された。しかしながら、予期せぬ軍部によるクーデター、地震などの自然災害が重なり、大統領はその職を去った。 1992年に選出されたF・ラモス大統領は、これらの様々な課題に対処していくための開発プログラムとして「フィリピン2000」計画を発表し、保護貿易主義による統制、公的債務の統制、法律執行機関の権限強化などを試みている。同時に、フィリピンをアジアの「タイガー」として位置づけ、持続的な成長を目指して、政治と公務の責任の回復・開かれた経済、汚職や犯罪への対応に重点を置きつつ、さらなる社会経済の発展に努めている。 3 統治機構
(1)統治区域 フィリピンは、憲法上、統治区域として、州、市、地方自治体、バランガイ及び2つの特別自治区を置いている。また、中央政府は、行政機能をよりよく果たすために、国内を14の管区に分けている。 ?@州 ・地方組織として最大の政治的、行政的単位。市と地方自治体からなる。 ・知事及び副知事が置かれる。知事は最高行政官としての監督責任を有し、地方政府と中央政府との重要な連結役を果たす。 ・州議会は、知事、副知事、バランガイ連盟議長及び地方自治体から選出される者からなる。 ・開発と病院、高校などの管理運営を所管する。 ・73の州がある。
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